大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(け)33号 決定

被告人 木付大介

〔抄 録〕

被告人の氏名については原則として黙秘権がなく、また法は手続上の過誤を防止するため控訴の申立を要式行為とし、被告人が自ら控訴申立をするには、自己の氏名を自署し、押印した控訴申立書を第一審裁判所に差し出すことを要するものとしている(刑訴法三五一条、三七四条、刑訴規則六〇条、)のみならず、自ら控訴を申立てた被告人は訴訟の主体として誠実に訴訟上の権利を行使しなければならない(同規則一条二項)から、氏名を記載することができない合理的な理由もないのに、これに違反して、申立人である被告人の署名のない申立書によってした控訴は無効なものと解すべきところ(最高裁判所昭和四〇年七月二〇日決定・刑集一九巻五号五九一頁)、関係記録を検討すると、本件において差し出された控訴申立書には上野警察署留置番号一九号を指す「上野一九」という記載とその名下に指印があるだけで被告人の氏名の記載はなく、しかも右申立書添付の東京拘置所附箋用紙の記載によると、被告人は同拘置所係官がいくら指導しても氏名を書き入れなかったことが認められるのであって、その他、被告人が自己の氏名を記載することができない合理的な理由は何等認められないから、右申立書によってした控訴は無効というべきであ<る。中略>

なお、右控訴申立書中には右「上野一九」の記載及び指印の傍らに「右は本人の指印であることを証明する、東京拘置所看守部長福島五郎」との記載があり、右福島の認印が押されているが、右は前記指印が同申立書作成者本人のものに相違ないことを証するだけのものであって、同書に被告人の氏名の記載がないことに変りはなく、これにより控訴を有効とすべきいわれはない。

(千葉 永井 中野)

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